動悸を感じたらどうしたらいいですか?

「動悸」は多くの方が感じた経験をお持ちだと思います。多くの人の前で話をする時や試験の時など。患者さんが「動悸」でクリニックに来られる時は「心臓は大丈夫?」とご不安になられているのを感じます。循環器専門医として、「動悸」が心臓由来なのか、かつ治療を必要とするのかを症状や検査から判断しています。
まず「動悸」は症状から3つに分けて判断をしています。

  • (1)ウッ!・・・脈がとぶ感じ、胸がつまる感じ
  • (2)ドクンドクン・・・鼓動が大きく感じる
  • (3)ドキドキ・・・鼓動が速い

(1)は、胸がつまったり、飛んだりして気持ち悪いことが多いですが、良性の不整脈(期外収縮)によることが多く、大きな問題とならないことが多いです。

動悸

(2)は、患者さんの症状は強いのですが、心臓病が原因となっていることはなく、精神的なことが原因となっていることが多いです。緊張したり、不安のために自律神経が不安定になることで起こりやすくなります。

(3)は実際に心拍数が上がっています。原因が潜んでいることが多く、(1)(2)と異なり、治療が必要な病気が隠れている場合が多いです。
循環器専門医として、(1)~(3)である程度の目星を付けてから診療をしています。

実際に診察の現場で遭遇するのは(1)の期外収縮が40%、(2)の精神的な問題のものが50%、(3)が10%程度くらいと感じます。
さて「(3)ドキドキ」は(1)(2)と比べて注意を要します。考えられる疾患は下記に記しますが、心臓病以外にたくさんありますので、症状の続く時間や、どのようなタイミングで起きるのか?などを確認しながら原因を探り、確定診断につなげていきます。

動悸がする場合、どのような原因が考えられますか?

「(3)ドキドキ」という動悸症状は、不整脈であることがあり注意深く診察を行います。しかし、上述の通り約10%程度と、該当する患者さんは少なく、その中で治療を要する不整脈となると、更に少ないのが現状です。同じ症状で、別の病気であることが多いため、まずは適切に診断を下すことが優先されます。

心臓 動悸 心臓に原因がある場合は、①不整脈や②心不全の可能性が考えられます。
①不整脈:
脈が速くなると「ドキドキ」という動悸症状を感じます。代表的な不整脈は「発作性心房細動」です。心房という部屋が細かく動きすぎることでドキドキの原因となります。原因は加齢、高血圧、糖尿病などがあげられ、ストレス、飲酒、運動不足、睡眠不足なども原因となります。放置しておくと脳梗塞や心不全に進展しえるため、治療が必ず必要な不整脈です。
またもう一つは「発作性上室性頻拍症」です。発作が起こると、突然1分間に150回も脈を打つことになり、ドキドキの原因となります。正常の心拍数は60回程度ですので、突然走った後のような心拍数になるのでドキドキするのは当然と言えるかもしれません。あまりに心拍数が大きいと血圧が下がってしまって、ふらついたりすることがあります。その場合や発作が頻回のようでしたら、治療が必要になります。
②心不全:
心臓の働きが低下し、身体が必要とする酸素をうまく運べなくなってしまった状態です。そのために、心拍数が上がり、結果として「ドキドキ」という動悸症状を感じます。心不全の場合は、その他に身体のだるさや食欲不振、足のむくみなども認め、ひどくなると息苦しさも伴いますので、治療をしなくてはなりません。動悸以外にもさまざまな症状を伴うため診断は比較的容易です。ただ治療は原因疾患によりますので、循環器専門医による評価が必要となります。
心臓以外 心臓以外の原因としては、甲状腺機能亢進症、貧血、低血糖、脱水、肺疾患(タバコ肺)などが考えられます。
  • 動悸
  • 動悸
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③甲状腺機能亢進症:
甲状腺ホルモンが過剰により起こりますが、バセドウ病はよく遭遇します。特に若年の女性に多く、手の震え・体重減少・発汗多量・疲れやすくなる、などの症状を伴います。甲状腺が大きくなりますし、比較的容易に診断できます。甲状腺疾患と不整脈は密な関係があるために、不整脈を疑う患者さんには全員甲状腺の評価を行います。
④貧血:
血液は身体に酸素を運ぶ働きをしますので、貧血となるとその働きをカバーするために、心拍数をあげて対応します。それが「ドキドキ」といった症状につながります。貧血の場合は、特に動いた時の「ドキドキ」が強いのが特徴です。
⑤低血糖:
糖尿病の方が血糖値を下げる薬剤やインスリン注射をしている時に、血糖値がかなり低くなることを低血糖といいます。低血糖という危険な状態になっていることを身体が察知して、心拍数をあげるために「ドキドキ」します。この時は同時に冷や汗やふらつきなどを伴います。

動悸がする場合、クリニックを受診する方がよいですか?

上述の通り、「動悸」で受診された患者さんで、実際に心臓病として治療を必要とすることは、全体の10%もいません。ただだからといって放置していいことはなく、心臓病以外の疾患の可能性もあり、一度は受診されることをお勧めします。その中で稀ではありますが、悪性度の高い不整脈のこともありますので、まずは循環器専門医に診てもらうことが安全でしょう。
また、「動悸」のみならず、「ふらつき・めまい・立ちくらみ」 「意識がなくなる」 「息苦しさ・息切れ」がある場合は、治療が必要になりますので、早めに受診下さい。

動悸がする場合、どのような検査を行いますか?

まずは症状が不整脈によるものなのかを確認するために心電図検査を行います。ただ症状のないときには心電図検査でひっかからないときもあるので、そのときは24時間心電図(ホルター心電図)を実施し、長時間心臓の動きを確認する検査を行います。
不整脈には顔つきの悪い(悪性の)不整脈と顔つきの良い(良性の)不整脈があります。顔つきの悪い不整脈は治療をしなければ命に関わりますので、その評価のために心臓エコー検査は必須となります。心機能(心臓のポンプ機能)の悪い患者さんの不整脈は悪性度の高い不整脈のことが多く、循環器専門医による評価が必要な疾患となります。また顔つきの良い不整脈でも、1.症状が強い場合、や2.心不全のある場合、は治療の適応となります。心不全の有無については、患者さんの身体所見と、胸部レントゲン撮影、採血などを組み合わせて診断、治療の適応の有無を判断します。
また、甲状腺疾患、貧血、低血糖などその他の疾患も採血で判断できます。

不整脈が原因の場合、どのような治療を行いますか?

「動悸」を感じる不整脈は脈が速くなるタイプが多く、「発作性心房細動」や「発作性上室性頻拍症」がその大半を占めます。
「発作性心房細動」は以前は薬物で治療をしていましたが、最近はカテーテルアブレーションの治療成績が良好なため、最初からアブレーションを選択することが多くなっています。治療後の再発予防のためには1.生活習慣の改善や2.運動療法が必要で、それでも再発する場合は、薬物を併用して管理をします。
「発作性上室性頻拍症」は、ほぼ全てをカテーテルアブレーションで根治できますので、逆に薬物で治療をすることはほとんどありません。再発も稀で、治療により症状が劇的になくなりますので大変喜ばれる疾患の一つです。

1.手術(カテーテルアブレーション)

2.生活習慣改善

動悸

タバコ、コーヒーなどのカフェイン摂取過剰、ストレス、睡眠不足は、自律神経の状態を不安定にさせることで、不整脈を増やします。バランスの良い生活習慣を送ることが不整脈を起こさない一番の治療法です。

3.運動療法

動悸

運動療法は、自律神経の状態を良好に保ち、不整脈を減らす効果があります。バランスの良い生活習慣の一つでもあり、生活の質を上げるために是非お勧めします。ただきつい運動は逆に不整脈を増やすことにつながるため、適切な運動量を行うことが必要です。

4.薬物療法

動悸

「発作性心房細動」に対して、カテーテルアブレーションのみでは対応できない場合に使用をします。また「発作性心房細動」は血の塊(血栓)ができて脳梗塞を起こしてしまうため、高血圧や糖尿病などを併発している患者さんは、血栓ができなくなるように血をサラサラにする薬(抗凝固薬)が必要となります。